保証人と「車の値段」

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昨日のグラミン銀行のビジネスモデルのキモは、「返済計画をグループで話し合うことによって、コミュニティという第三者の『知恵』を融資のリスクヘッジに使うということ」ではないかというお話をいたしましたが、これに対して、保証(保証人)というのは、第三者の「財力」を融資のリスクヘッジに使うというものということになります。
昨日の日経朝刊4面の記事:

無限の返済責任、個人は負わず、「包括根保証」無効に——法制審部会が試案作成。
 法相の諮問機関である法制審議会の保証制度部会は二十四日、融資に関する個人保証人に金額の限度なく無期限の返済責任を負わせる「包括根保証」を無効とする試案をまとめた。(中略)
 試案では根保証契約について限度額を定めないものは無効と規定。保証期間は原則として五年以内、合意がない場合は三年とする。ただし、保証人が代表権のある経営者の場合は、三年が経過した時点で債務確定の請求だけができる、とする案も盛り込んだ。

よくそんな保証しますなあ、という感じですが。する人がいるわけですね。(しかも多数。)
「他人の保証人にだけはなるな」というのが家訓とかおじいちゃんの遺言、という人も多いんじゃないかと思うんですが。
また、そもそもオーナー社長が融資の個人保証をするというのでは、有限責任制度のマクロ政策的意味がないですよね。個人保証しない場合のモラルハザードの発生をどうするかという問題はさておき、基本的には株式会社や有限会社で事業を行うのに社長や親族が保証をしても世の中うまく回ったのは高度成長時代までのお話ではないかと思います。
90年代前半、日本の中小企業への資金供給の調査をする機会があって、日本の「ベンチャー」はいったいどうやって創業時の資金を獲得しているのだろうか、という大きな疑問にぶちあたりました。銀行は無担保では金を貸さないし、つなぎ資金以外で商工ローンの金利をまかなえるほどの収益力のある事業もなかなかないだろう。当時もエンジェル的な人はいないわけではなかったですが株で投資してくれるというよりは高い金利を期待した融資的な資金供給が多かったのではないかと思いますし、ベンチャーキャピタルというのも「公開直前の会社の株を取得して公開益を取る」という存在で、スタートアップしたばかりのベンチャーに対するエクイティファイナンスなんて想像もできない時代でした。
その流れで、商工ローン各社のトップにインタビューする機会がありました。商工ローンに対する社会的批判が高まる直前の時期です。
保証人を連れてきたら融資するというしくみを取っている商工ローンの社長に、
「保証人というと、『他人の保証人になったばっかりに一家離散』というようなことが連想されるが、保証人を取って融資するということについての社会的責任についてはどうお考えですか?」
というようなことを聞いてみました。
その時のその社長のお答えは、
「当社は、保証人の財力を見て保証人になってもらうかどうかを決めている。当然、それだけの財力が無い人は保証人になってもらうことをお断りする。
保証人が保証する額の目安は、『その人が買える車の値段』が一つの基準。
保証人になってくれる人の中には、医者や財団の理事長、会社の社長といった財力のある人もいる。そういうベンツとかフェラーリとかが買える人であれば1000万円とか1500万円を保証いただくこともある。
逆に、軽自動車しか買えないであろう方が保証人になる場合には、50万円しか保証していただかない。万が一借り入れをした人が返済不能になって保証することになったとしても、『その人が買える車の値段』というのは、ちょっと生活を切り詰めて、2〜3年かかれば返済できる額だ。」
とのお話でした。
本当に現場までそういう運用で融資や保証が行われていたのかどうかはさておき、「その人が買える車の値段が保証の限度」というのは、「なるほどー。確かに無理すれば返せない額ではないな」と説得力を感じた記憶があります。
(少なくとも、無期限、無制限の保証よりはよろしいかと。)
あれから十年経つか経たないかで、今では(exitの可能性があれば、ですが)創業時のベンチャーでもエンジェルやベンチャーキャピタルからエクイティファイナンスを受けられるいい時代になりました。
これというのも、(行き過ぎはありましたが)株式公開の基準が大きく下がり、アーリーステージのベンチャーへの投資が合理性を持つようになったこと、また、(行き過ぎはありましたが)ネットバブルが発生したおかげで人々の目がベンチャー界に向いて、それまでは考えられないような人材がベンチャー界に飛び込むようになったことなどが大きいのではないかと思います。
公開の門を堅く閉ざして有望なベンチャーが公開のチャンスを逃がすよりは、(行き過ぎはあったかも知れませんが)多少ゆるめの門で東証さんに2年に一回くらい業務改善命令が出るくらい(ほほえみ)が、ちょうどいいかも。
(それではまた。)

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