ゲリラとガバナンス

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全く反応がないかと思ってた昨日のコメント(組織のパラダイムシフト(「日露戦争物語」))ですが、意外や意外、einenさんと吉松さんから2件ほどコメントをいただきました。
ありがとうございます。>einenさんと吉松さん。<(_ _)>
einenさん曰く;
(前略)お題の組織のパラダイムシフトなんですが、この既存の軍隊組織ってのは正規軍同士の戦いでは有効なんでしょうが、ゲリラ戦においては適当とは言えないような気がします。
で、どういう組織が良いのか、これは頭の痛いところなのです。
磯崎先生のご意見伺いとう存じます。

「伺いとう存じます」とおっしゃられましても〜(←クレヨンしんちゃんの声で)・・・私、軍事の専門家でも何でもないので、ズバリのお答えは江畑謙介さんにでも聞いていただくこととして。
そもそも、「正規軍」が「ゲリラ」に弱いのはあたりまえとも言えます。なぜなら、「正規軍の弱いところを突く」のが「ゲリラ」であって、正規軍と正面からぶつかっていく小集団がいたら、それはただのアホでしかないので。
つまり、「正規軍がゲリラに弱い」というのは、ほとんど「定義」であって、正規軍がどう形を変えようが、いつまでたっても正規軍はゲリラ戦には弱い、と言えるんじゃないでしょうか。
(とんち小坊主一休さん的お答え。)
また、「権力を持つ側」が「意にそわないハネっ返りモン」とどう戦うかという一般論で考えて見ますと、「個別のゲリラ戦をどう戦うか」というミクロレベルの話をしているというのはすでに「失敗」している状態で、「そもそもゲリラが出てこない体制を構築する」のが、権力側の王道と言えるのではないかとも思います。
孫子の「戦わずして勝つ」にも通じますが、今風にかっこよく言うと、「ガバナンスの構築」、イヤラシ〜く言うと「洗練されたチクリ構造の構築」ということにもなるかと思います。
昔から「五人組」とか「隣組」とか「divide and control」とか、「相互監視体制」を構築することで、そもそも謀反を企てにくい構造にしてしまうというのが基本だったかと思います。
コーポレートガバナンスの観点から考えても、古くは大恐慌の後に公認会計士による監査制度が導入されたわけですが、エンロン事件や日本での雪印乳業、三菱自動車などの不祥事を受けて、そういう「たまの」監査ではやはり不祥事は防止し切れんということで、内部監査など内部統制の拡充や、弁護士等外部への内部通報システム、公益通報者保護法の制定、などの対策が急速に整備されようとしています。
コンピューティングの観点からだと、OSとウイルスの戦いがまさにそうですね。または、OS自体をオープンソースにして、「相互監視」の枠組みの中に置くということもそうかと思います。(「焦土作戦」ともいえますが。)
また、物理的な監視関係だと、カメラ付きケータイの普及で、デジタルカメラがタダで配れるほど安くなってしまった影響というのは大きいかと。ハードディスクもウソのように安くなってしまったので、今までだと銀行のATMで金をひったくって駆け足で逃げる犯人の顔は映らないこともあったのが、最近の監視カメラ(システム)は1秒間に記録できるフレーム数が多くなり、走って逃げる犯人の顔も確実にとらえられるようになっているようです。当然、同じコストでの記録時間も格段に長くなってます。
商店街等でも設置するところが増えてるようで、確実に成果が出ているようですし、そもそも、ほとんど全員がカメラ付きケータイを持っていれば、悪いことして逃げるヤツがいたら、誰でもすぐに証拠写真を撮れるという、「1億総相互監視」時代が始まろうとしております。
確実に「マイノリティ・リポート 」の世界に近づいているというか、横丁のご隠居風に言うと「世知辛い世の中になっちまったもんだねえ〜」という感じですが。
さて、以上は「体制側」の観点からのお話ですが、「ベンチャー企業」というのはゲリラそのものですよね。逆に、いかに既存のマーケットの間隙を突くか、大企業が正規軍を派遣してきたときにもそれを奇策で打破できるか、を考えておく必要があるのではないかと思います。
もちろん、ゲリラというのはまともにやって正規軍に勝てる見込みが小さいので、恐怖に怯えて萎縮してるだけでは勝てるモンも勝てんのは当然ですが、一方で、ちょっと資金調達に成功したり知名度が出てきたりすると、利益も出てないのに「エスタブリッシュメント」になったと勘違いしちゃう困ったベンチャー企業もたまにいます。
これも程度問題ですが、確かに市街戦で廃墟に隠れようというときに「そこに正規軍がすでにいたらどうする」という心配をしてもしょうがないですが、見渡す限りの大草原にノコノコ出て行って上から空爆されるのは、ただのアホかと思います。
ゲリラは死の恐怖を感じて、正規軍の何倍も脳細胞を回転させないとアカんかと思いますが、1998年以降、日本でもベンチャーによるエクイティファイナンスが活発化して、(いいことではあるんですがその一方で)この「死への恐怖感」がボケてる面があるかと。
逆に、すでにゲリラじゃない域に達しているのに、ゲリラ的な行動しかしない企業というのもそれはそれで困りものです。
じゃあ、いつからどうすればいいの?ということですが・・・それが簡単にわかりゃ苦労しませんわね。(笑)ベンチャー企業の社長の悩みの半分くらいは、そのあたりのことではないかと思います。
(お答えになってないと思いますが、本日はこのへんで。)

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